休みの無い部活動、度を過ぎると、健康被害や子供をつぶす事もあるって本当?

ゴールデンウィーク、普段の土日や祝日も含め、子供は部活で休みが無いんです。身体を壊さないか心配で。

とある保護者より相談を受け、改めて現在の部活動の現状や、それが引き起こす事態について調べてみました。

私自身は、中学校の部活動外部コーチもしていますが、基本的な生徒の休みは、日曜と月曜、隔週で土曜という感じで、スポーツ庁が定めるガイドラインにも抵触する事なく指導に入っています。

休みがしっかりある事で、体力の回復や、勉強の時間に使ったり、友達や家族との時間を作ったりするなど、1度しかない中学生生活を楽しんだり、思い出作りが重要と考えているからです。

そうなると、土日や祝日含め部活動で休みが無いというのは、僕の考えとは対照的で、そこへ参加している生徒達は、体力の回復、勉強の時間、友達や家族との時間は、どうなっているのか?

この保護者の話しが真実なら、体調や学力の心配(勉強の時間が無い)が出てきたり、学生生活の思い出は、部活動だけという事になるが、それは、保護者も生徒自身も願っての事なのだろうか

この記事で分かることは・・・

  • スポーツ庁による、運動部活動に対するガイドラインの在り方や趣旨が分かります。
  • 練習時間が減っても、効率の良い練習をすれば、競技力は落ちません、逆に休みを取り入れている方が勝利回数が増えている学校もあります。
  • 休みがない練習は、スポーツ障害のリスクが高く、ひどくなると、健康被害なども起こります。

部活動に対するガイドライン

スポーツ庁では、運動部活動の在り方に関するガイドラインを策定し、公表しています。

スポーツ庁 運動部活動に関する総合的なガイドラインFAQ(リンク先へ移動します。)

スポーツ庁による運動部活動の在り方に関して

この運動部活動の在り方に関するガイドラインは、スポーツ庁からの日本のすべての中学校と高校の、公立、国立、私立を問わず対象であり、スポーツクラブや競技団体は対象ではありませんが、理解と協力を促すことが求められています。

だが、しかし、今回相談に来られた保護者の学校のように、ガイドラインは無視して、休みなく部活動を行っている学校もあり、それは、部活動が強い強豪校として名を上げたいというような、どちらかというと、生徒側ではなく学校側の思惑の方が強い場合もあるようで、

公立の場合、先生の移動や、教育委員会もあり、土日などの休日手当も、1日出ても2~3千円くらいなど、先生にとっても大変な環境もあり、日曜と祝日とは別に、月曜から土曜で1~2日休みにして、ガイドラインに従い、部活動を行っている学校が多いようですが、

私立高校の場合、教員免許を持っていても、教師は会社員と同じなので、移動の心配もなく、元私立の教員から聞いた話しですが、自分が受け持つ部活が全国大会で活躍するものなら、特別手当がでるなんて事もあるらしく、

また、公務員ではないので、学校側から給料をもらう立場であり、仕事として当然、土曜・日曜・祝日の部活動には、会社員と同じように、休日出勤手当がつき、

ゴールデンウィークのような連休や、それが、学生にとって重要なテスト前の週末なんかも、完全な1日休み(先生も休み)を与えるよりも、午前中だけでも部活をした方が(半日勤務)収入になったそうです。

当然に公立、私立問わず、強豪校含め、生徒の事を考え、部活動に励む先生方は、たくさんいらっしゃいますが、その中で、多くの学校がガイドラインに従い、休みを取り入れ、それこそ生徒の健康や身体、リフレッシュ休みなど考えているなか、

ガイドラインをきちんと理解し、そのリスクを知ったうえで勝利主義に走り、土曜・日曜・祝日、さらには大会直後やテスト前日さえも、休みにしない理由の一つが、生徒のためではなく、もしかしたら、そんな理由も含まれているのかも知れません。

そもそもガイドラインが出来た背景とは

このガイドラインの趣旨は、

  • 公立学校の部活動顧問となる教師の長時間労働の回避
  • 勝利主義や大会で勝つ事のみを重視した過度な練習の回避
  • スポーツ外傷やスポーツ障害のリスク回避

などがあり、部活動の外部委託と合わせて、有識者会議等行われてきました。

特にスポーツ外傷やスポーツ障害のリスク回避のように、スポーツ医・科学の観点など、しっかりとした研究を踏まえて、活動時間等に関する基準が示されており、成長期の生徒に対しての十分な休み(体力や精神的な回復・睡眠など)や、活動時間(集中力が途切れない2時間程度)など、バランスの取れた生活が送れるように作られています。

「練習時間が減れば、競技力も落ちる」のではなく、「短時間・効率的・効果的な練習」を指導者に求める

また、このガイドラインにより、練習量が減り、競技力の低下や、練習したい人が練習できないのでは、といった質問もあるようですが、

では逆に、練習量を今よりも2~3時間増やしたり、365日練習していれば、単純に強くなれるのでしょうか?

プロの選手でも、オフシーズンや、休養日は存在し、身体を休ませる事を重要と考えています。

大切な身体だからこそ、休む事を理解し、効率よく、高効率なトレーニングをしているのです。

それが、成長期の子供たちとなれば、なおさら余計に必要な事ではないでしょうか。

また、練習したい人が練習できないのではなく、もっと強くなりたい、もっと練習したいと思うのであれば、別に部活動の時間に限らず、部活で習った重要なポイントを家で反復練習したり、筋トレをしたり、トレーニングの手段は、多様に存在します。

伸びる選手は、自分から練習をしています。

どんなに練習時間が長くても、その時間内だけやればいいという考えなら、それで終わり。

もし、家での練習が分からなければ、家でも練習したいが、どのような、一人で出来る家トレがあるかなど、部活の時間に教えてもらっておけば良いのです。

また、先生や学校側も、「休みを与えない、長時間練習に未練がある」のは、やはり昔の考えの指導者や、もし練習時間を短くしたり、休みを与えるようになった後、試合で負けてしまった場合、言い訳が出来ない、自分が責められるから、それなら今まで通りに、といった考えの指導者にあるようです。

しっかりとした効率の良いトレーニングをして、休む事の重要性を指導できるか、選手の身体の事よりも勝利主義で、勝つためなら休みは必要ないと考えている指導者か、どちらにせよ指導者の考え方次第で、生徒の学生時代が大きく変わるので、良き方向へ導いてもらいたいものです。

教師の長時間労働だけを見るのではなく、生徒も長時間労働だという事

ガイドラインでは、競技経験や専門知識がある指導者へ、土曜日や日曜日の外部委託の話しや、部活動そのものの外部委託など、地域移行の期間とされていますが、

これも同じく、月曜日から金曜日まで、フルで活動していた場合、土曜日や日曜日は、外部で練習するとなると、教える教師や指導者は、曜日で代われますが、生徒自身は月曜日から日曜日まで、ぎっしりと部活動やそれに代わる習い事が入ることになります。

どこかで、教師や指導者が、休みの必要性を伝え、休みを取り入れるようになれば、身体でも頭でも、休養日ができて、リフレッシュすることが出来るようになるでしょうが、誰も気付かない、または、教えない、必要ないと考えるならば、体調を壊す原因になっていくでしょう。

スポーツ障害は簡単には治らない

スポーツ障害は、必ずしも、競技中にケガをした物だけではありません。

身体に蓄積されていく疲労のように、骨や筋肉、精神や心にも起きていく、しかも、取り返しがつかない状態になるかも知れません。

身体に起きる障害

有名なものに、野球肘やテニス肘といった物がありますが、野球肘は、投球動作において、肘関節が外側へ反ることが負担になり、発育期だと関節障害、中高、成人でさえも、ひどくなると手術が必要になります。

テニス肘は、ラケット等握って支え打つ動作が酷使された時に負荷がかかり、ひどくなると、手首の障害のため、日常生活に支障が出てきます。

他にも、軟骨や神経を痛めるような障害もあり、ひどくなると、スポーツがやれなくなるだけではなく、学生生活を終えた以降も、付き合っていく障害にもなりかねません。

心に起きる障害

身体の中、特にストレスや疲労状態の悪化による障害も、大きな障害へ発展することがあります。

ストレスは、様々な障害への引き金になりやすく、帯状疱疹のようなものや、心身症への発展、

うつ病など、気持ちが折れる原因にもなります。

また、オーバートレーニング症候群といった、疲労が十分に回復しないまま積み重なって引き起こされる慢性疲労状態は、倦怠感や睡眠障害、食欲不振や集中力の欠如などを引き起こし、それが原因で、さらにひどい症状やケガ、通学時の事故などにつながる場合もあります。

休んでいれば治った状態を通り越し、入院や手術、長期療養などにならないよう、本当の意味で、普段からしっかりと練習や部活動の休みを取り入れ、回復した身体と心で練習に励み、また休養し、練習する。

強豪校でも、しっかりと休日を取り入れる学校も増えてるようで、休日を作るようになってから、大会で勝利するようになった、生徒達がよく話すようになったなど、成績が上がったり、部活動の雰囲気が良くなったりするなど、体力だけではなく、休みという時間の余裕が、心の余裕につながっている。

例えば、「休みはない」で通して練習していくか、「土曜日まで頑張れば、日曜日は休みだぞ!」これを、自分の仕事に当てはめれば、簡単に分かることで、

メンタル面では、どうやっても休みを取り入れてる方が、メリットがあり、メリハリもついて、効果が高くなりますので、それが結果として良い方向へ働くのは、当然な事なのです。

子供の変化に気付けるのは、本当は親だけ

本当はつらい、本当は休みたい、本当はゆっくり寝ていたい、症状がひどくなる前になんとかしてあげたい物ですが、子供から言うことは、そうはないでしょう。

また、言葉にして言っていたとしても、先輩や同級生が来ている、孤立や、いじめを恐がる、入学した以上、無理してでも行かないと親に申し訳ないなど、心理的にも行くしかないのです。

子供の変化

高校生の運動部に対して、スポーツ庁が「部活動の活動時間が短くなったら何がしたい?」という質問を投げかけました。

すると、上から順に、

  • 眠りたい
  • 友達と遊びたい
  • 趣味がしたい
  • 勉強がしたい

が、上位を独占する結果となり、時間が無いから出来ない物が浮き彫りになったのですが、

中でも、眠りたいや、勉強がしたいは、普通に定期的な休みや、部活が遅くなり過ぎず、勉強ができる時間と体力が残っているならば、解決していく問題で、それすら出来ていないことになります。

また、睡眠不足や疲れがたまると、集中力が途切れたり、モチベーションも下がります。

普段から、子供の状態は気にしてみて、

  • いつもよりもボーっとしている時間が長い
  • 食欲がない
  • 情緒不安定
  • 明らかに疲れきっている
  • 会話がかみ合わない
  • 部屋に閉じこもる

など、普段はしない動作や行動を見かけた時や、

  • 時間がなく体力も無いため(部活疲れ)勉強が思うようにできない
  • 成績の悩み
  • 部活内での悩み
  • 先輩との上下関係

など、何か悩みを抱え込んだりしてそうな時は、しっかりと聞いてみてください。

ただ、中学生や高校生は、思春期があったり、一人で行動したかったり、正面からは親の行動を不快に思うような事を言ってみたり、反抗してみたかったり、難しい歳頃ですので、着かず離れずに接するのも重要です。

気付けない親

心理的な物で、同調圧力や集団規範など、その集団にいると、その集団の影響を受けるという心理的効果があります。

たとえば一人でいたり、考えると別の意見だった者が、大きな部活動の集団(保護者会など)の中にいると、集団に反発されないような意見を選んだり、同意を求められれば、そうですね。と合わせてみたり、

また、そもそも、この集団なら、すべて任せておけばいいという他人任せや、言ったら集団から外されるという強迫概念、

そして、それが今まで続いてきたもの(歴史や伝統)だったりすると、それが当たり前なんだと錯覚をしたり、休み無しで頑張っている事はすばらしい事だ、〇時間も猛練習しているなんて青春だ、1日休むと取り戻すのに3日はかかるぞ、

これだと、昭和の初期の考え方のままなんです。

時代も変わり、たとえば昔の練習の一つアヒル歩きのように、やり過ぎると膝を痛めるなど、身体を壊す事につながる事が分かり、研究され、子供たちのリスク回避などを踏まえてできたもの、それが部活動のガイドラインなんです。一度読んでみても損はないですよ。

まとめ(休みの無い部活動、度を過ぎると、健康被害や子供をつぶす事もあるって本当?)

好きなスポーツに打ち込み、勉強も頑張る!文武両道!

そう願い入学、入部した生徒は、多いのではないだろうか。

でも、実際は、部活優先!、休み無し!、朝から夜まで!、そこへ、勉強は帰ってからしろ!

はっきり言って無理があります、体力や精神的な回復が無いままに、疲れ切ってる状態で、集中して勉強はできません。

相談を受けた生徒は、朝6時半には出発し、夜8時過ぎに帰宅、明日の準備や夕飯中にウトウトしていて、準備をしながら倒れるように寝ていた事もあるらしく、

その様子を見ていたり、朝も早くに起きるのが分かっているのに、夕飯食べたら勉強しろ、風呂に入ったら勉強しろとは、確かに言えないそうです。(一応、自主的には勉強をしようとしているらしいので、それ以上は言えないと。)

しかも、これが土曜、日曜の休みが無いとなれば、仕事なら労働違反である。

僕が強く心配しているのは、身体を壊す事と同時に、好きだったスポーツが嫌いなスポーツに変わること、ずっと打ち込んできたろうに、指導者のやり方一つで、見方が変わる。

好きだったスポーツのせいで休みがない、勉強ができないと考えてしまうと、何のためにやっているのか、今までやってきたのは何のため?、すべてが否定されてしまい、燃え尽きたように意欲を失う、バーンアウトシンドロームと呼ばれる、燃え尽き症候群を引き起こす可能性もあり、ひどくなるとすべての意欲がなくなり、社会にも適応できなくなる。

過度なストレスや、極度の疲労により発症し、起きたくない、行きたくない、行動したくない、対人関係を避け、人生に対して悲観的になる、最悪の場合は自殺もある、

また、この症状は、疲労の積み重ねで起こるオーバートレーニング症候群の、慢性疲労状態と密接な関係があるとされている。

「休みはとても大切なこと。」

「健康な身体があるから、好きなスポーツに打ち込める、しっかり休んで、心や身体をリフレッシュさせたら、また、目標に向けてがんばろう!」

「しっかりと休んで、身体を休ませている間に、少しの時間でもいいから、学校の勉強(復習)もして、また、休みが終わったら、勉強や部活動に、がんばっていきましょう!」

僕が指導している生徒達に、言っている言葉です。

生徒達は、学校の勉強(復習)部分には、え~!と笑いながらも、とても活き活きしています。

「良かった!」と感じて頂けましたら、シェアお願いします。
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